2010年10月22日

『今夜、すべてのバーで』

    
『今夜、すべてのバーで』
  わが家のノボタン 鉢植えながらよく咲いてくれます。
            花言葉:「冷静」「平静な心」





君が何気なく過ごした今日という日は、
昨日、天に昇った誰かがどうしても生きたかった
明日なんだよ。
      by 詠み人知らず


この言葉は 故中島らも氏の小説 
『今夜、すべてのバーで』 のラストシーンに似ている。

深夜の病院霊安室で 17歳の少年の遺体を前に
主人公の小島(らも氏本人)と その主治医赤河とが
エチルアルコールを 酒がわりにビーカーで飲みながら
掴みあいの喧嘩になる この小説の核心的部分だとも言える。


恵まれた環境にありながら アルコール・薬物に依存し
入院患者という身で 夜な夜な飲みに出歩いている小島に
酔った赤河が詰め寄る・・・

「小島さん、あんたはいくつになるんだ」
「三十五ですよ」

「三十五っていうと、この子といくつ違う」
「十八ですね」

「十八違いか。そうかそうか。」
 
 また、おれのビーカーにエチルがつがれた。
 赤河は、こぼれるのもかまわずに注ぐと、自分のビーカーにも
 つぎ足して、一口、二口あおった。

「あんたな、この病院出て、毎日大酒くらっても、二年は生きるぞ、最低で」
「はあ」

「もっと長いかもしれんが、肝硬変になって、食道静脈瘤になったって
 考えていっても、最低二年は保つだろう。うん」
「はい」

「この子との差の十八年と、残りの二年を足して、ちょうど二十年だ。なあ」
「はい」

「それをこの子にくれてやれよ」
「え?」

「その二十年をくれてやれよ。そしたらこの子は、二年後に死ぬあんたと同じ
 三十七まで生きられる。くれてやれよ、それを」
「くれてやりたい気は、おれもするんですが」
 おれは本心からそう言った。
「その気持ちはやまやまなんですが」

「やまやまだと?」
 赤河がいきなり立ち上がって、おれの胸ぐらをつかんだ。

「きさまの二十年をこの子にやれないのなら、せめてあやまれ。
 この子に土下座してあやまれよ」




このあと激怒した赤河が 小島を持ち上げ少年の遺体の上に
投げおろす。
台から滑りおちた少年の遺体と 酔っ払った二人の男
(実は赤河医師自身も酒乱だった)が 床を転げる乱闘に~
という想像を絶するシチュエーションが なんとも強烈だ。

赤河のこの憤りは 医者として少年を救えなかったことへの
自責の念と 自らの人生を省みて噴出した感情なのだろうか。


長くなりそうなので ここらでやめときます (笑) 

なお 中島らも氏については こちら



今日も ありがとうございます。



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Posted by 夕焼け小焼け at 21:41│Comments(0)
 
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