2011年05月09日
『チャンス』

保護色なお猫さま^^
昨日 スカパーで面白い映画を観た。
コメディーなのに 深く内面に沁み入る傑作だった。
原作はポーランド出身の ジャージ・コジンスキー
原題 Being There (1971年刊行)
日本語訳『庭師 ただそこにいるだけの人』
映画は1989年制作
『さらば冬のカモメ』『帰郷』の監督ハル・アシュビー
脚本はコジンスキー本人。
『Being There 』は
ニーチェの「ツァラトゥストラはかく語りき」
あるいは ハイデッガーの「存在と時間」を下敷きに
書かれたというだけあって 「今ここ」を知るには
ひとつの手掛かりになる。
ピーター・セラーズが演ずるところの 庭師チャンス。
彼の出自は不明だが ものごころついたころから
数十年間 屋敷の外へ出たことはなく
車やエレベータに乗ったこともない。
読み書きはできないが 植物の世話と唯一
テレビを見ることだけが 彼の日常であり世界だった。
その庭師チャンスが ある日屋敷の主人の死によって
外の世界へと放り出されてしまう。
そこから始まるストーリーは クスクスと笑える。
あくまでも静かに そして哲学的なコメディーだった。
スラム街の悪ガキに遭遇して ナイフをつきつけられて
汚い言葉で罵られる場面での
「ボスのラファエルに 会いたきゃ手めえで探しな!」
という台詞も この作品のキーワードだった。
そして ラストシーンでは チャンスが湖の向こう岸へと
疑いもせずに 水の上を歩いて行く場面で
静かに流れるナレーションに はっ! と胸を衝かれた。
「神は自分に似せて人間を創った。
そして人間は自分(神)を 見るために鏡を創った・・・」
今日も ありがとうございます。
Posted by 夕焼け小焼け at 14:53│Comments(0)
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